■被害者 「実はね――うちの生徒が一人、被害にあっているのだよ」 「噂が先だったのか、被害が先だったのか、私にはよくわからんのだが」 「ああ、今も入院中だ。一週間ほど前のことだからね。この近くの、えーと、」 「……あーっと、そんなことまで言う必要はないか。とにかくね、噂の元になるような被害が出ているわけだよ」 「ただ、どうしてそれが口裂け女と結びつくのかがよくわからんのだがね…」 ■担任教師 「いや、詳しいことは担任の教師しか知らんのだ。私らも詳細は教えてもらっていない」 「今日は…ああ、火曜か。今はちょうど、その女子生徒の見舞いに行ったところだろうね」 「まぁ…見舞いに行くのなら、いいのかな? ん?」<隣の先生と何やら話している。 「この近くの先坂病院と言うところに入院しているのだがね、まぁ、会えるのかどうかはわからんそうだ」 「面会できるかわからないのは、生徒の方だ。どういう容態なんだろうねえ」 ■目撃者 「ああ、そういえば、君らこの噂について調べているんだよね?」 「いや、本当に興味本位の質問で申し訳ないんだが――口裂け女ってのは、」 「独りっきりのところに現れるものじゃないのかね?」 「いや、今回の事件も、まぁ、誰も居ないところで起こったそうなんだが、それは被害者が走って逃げたから、なんだそうでね」 「見た、と言い張っている生徒も居るんだよ。」 「口裂け女が、その生徒の肩を叩くところを」 「いや、なんでも友人だったらしいから、動転して筋の通らないことでも言っているのかもしれないが…」 「『独りのときに襲われるとは限らない』のではないか、とね」 「どうだい? そんな話は聞いていたかね?」 #目撃者は涼子と一緒だったのか、それともたまたま見かけただけなのか? ■都市伝説との齟齬 「私らにとってもね、馴染みのない話じゃないんだ。口裂け女ってのは。あの頃から教師だからね。でも今回のは随分毛色がねえ」 「べっこう飴は舐めないだの、答えは求めないだの…」 「口裂け女じゃない、とは変なことを言うねえ。あんなもの居ないだろう、ただの噂だもの」 「ただ、噂のカタチが違っているというのがね。まぁあの頃も、それこそ海賊番みたいなものはいっぱい居たが…」 「ああ、『人目につかない』ところや『鎌を持っている』ところなんかは、正に口裂け女なんだよなあ。ううむ、懐かしい」