「じゃ、乃梨子ちゃん、本当に志摩子さんと一緒にプールとか行ったこと無いの?」

紅薔薇さまにたずねられた。

「はあ、教会とか寺院ならいっぱい行きましたけれど」

泳げないんだから行くわけがない。

「ふーん、実はね、私も水着姿で志摩子さんの隣りにはあまり立ちたくないのよね」

だってあのプロポーションでしょ。

そう言われるとがぜん見たくなってきた。

「それにプールだとキャップかぶるでしょ」

「ええ」

「志摩子さん、髪長いから、ふくらんじゃうのね。

そうしたら、顔の小ささがますます際立って見えてね」

ああっそれもいいなあ。

「そうすると、うなじがホント白くって。なまめかしいってああいう事をいうのね」

いかん、想像すると、息が荒くなってきた。はあはあ。

「で、泳ぐ姿がまた人魚みたいでね…思わず皆、見とれちゃうの。

バタ足すると、きゅっとしまった足首と、ふくらはぎがちらっと見えてね…」

ううっ、やめて下さい。紅薔薇さま。これはもう精神的拷問です。

「わ、私はキャップ似合わないんですよ」

鼻血がでる前に話をそらさなきゃ。

「髪の量、少ないのにうまくまとまらないんですよ。

ほら、私、紅薔薇さまほどじゃないけど、剛毛だからっ」

紅薔薇さまの笑顔が、なぜか固まった。

「それに、胸もないんですよ。Cカップだと少しゆるいんです」

紅薔薇さまの笑顔がさらに、ひきつった。

「まあ、その分ウェストはしまってますけどねっ」

ああ、ようやく落ち着いてきた。

「ねえ、乃梨子ちゃん。私、合宿でいい企画思いついたんだけど」

紅薔薇さまは、異様にニコニコしながら提案をなされた。

「薔薇の色別に遠泳競争するの。罰ゲームは学園祭の劇の主役ね」