日曜日。
祐巳と由乃と志摩子の三人は、M駅の中のショッピングモールに来ていた。
海に行くための種々雑多な買い物をすませ、
最後に本日の最大の目的である水着売場にたどりついた。
色とりどりの布が、何列もハンガーにあふれ、また壁いっぱいにディスプレイもされ、
見ているだけで楽しい。
(でも、私にも着られそうなのはあまり無いな)
祐巳は思った。
それに、今日は志摩子さんの水着が第一目的だ。
もちろん気にいったのがあれば買うつもりだったけれど、去年買った水着もかわいかった。
…今年もサイズ的に問題がないというのは少し寂しいが。
由乃さんも、いろいろ手にとって悩んでいるようだった。
胸のあまり開いていないデザインばかり選んでいるのが切なかった。
志摩子さんは、デザインやカラーの多さに、圧倒されているようだった。
由乃さんのリクエストで、白い物をさがしたが、結構高かった。
白は透けて見えるので、特殊な素材を使っているという。
そこで、色にこだわらず、いろんな水着を試着してもらう事にした。
その結果、どんな水着でも、志摩子さんは似合う事が判明した。
面白くなって、いっぱい試したが、店員さんは嫌がることなく、むしろ積極的に
薦めていた。
ホント、この水着はお嬢さんみたいな人に着てもらいたいのよねえ。
と嘆息していたのが、面白かった。
ワンピースから、ビキニまで、清楚なものから、大胆なものまで、
それぞれ、あつらえたかのように似合った。
カタログを見ているようだった。
着ける水着によって幼く見えたり、大人っぽく見えたりした。
結局、実年齢に近く見え、普段の志摩子さんを知っている私達が志摩子さんの
イメージにあう物を選んだ。
途中で、由乃さんは、どうしても我慢できないといって下着売り場に走り、
買ってきたものを、志摩子さんが家からはいてきた地味なものからはきかえさせた。
水着の下から見えるその面積がかなり小さくなったので、たしかに選び易くなった。
終わったあと、志摩子さんは、ぐったりとしていた。
由乃さんは買ってきた下着は、プレゼントだといって、頑として代金を受けとらな
かった。
志摩子さんは、(由乃さんは、いつもこんな小さいのをはいているの?)と言って、
もじもじと歩いた。やたら色っぽかった。
祐巳は、三人だけで来て良かったと思った。乃梨子ちゃんは必死で来たがったが
初披露は試着室などではなく、ちゃんと海辺で、と言って説得した。
私達でさえこんなに楽しかったのだ。
乃梨子ちゃんがいたら、きっと興奮して大騒ぎだったろう。
実は、同じ日、乃梨子ちゃんも買い物に来ていたらしい。
買ったのは大量の日焼け止めで、もちろん志摩子さんのためのものだった。