「‥‥蜜蜂ですか‥‥」
由乃はうめいた。卒業式にOGは参加してたっけ?
「うん、卒業式を見学したかったから魔法で変身したの!」
佐藤聖さまは、愉快そうに答えた。
外人かと思っていたら、実は人外だったらしい。
「まだ、言ってる‥‥」
水野蓉子さまがあきれたように言った。
ひさしぶりに聖さまにお会いになって、疲れておられるようだった。
‥‥聖さまは、どうやら事の顛末をその目で見たわけではないらしい。
江利子さまと大笑いしている聖さまに、由乃は拳を握りしめ、思わずつぶやいた。
「あの時、叩きつぶしておけばよかったっ‥‥」
「許してあげて」
志摩子さんが苦笑しながら、なだめた。
「でも、卒業式に中等部参加してなくてよかったよね」
祐巳さんがなぐさめるように言った。
‥‥たしかに、菜々にあの叫び声を聞かれずにすんだのは不幸中の幸いだった。
「でも、リリアンかわら版には、しっかり載せさせてもらうけどねっ」真美さんだ。
「おいしいわー、あのハプニング」
‥‥ネタを提供するつもりじゃなかったんだが。
新聞部には、あとでなんらかの対応が必要だろうな‥‥
由乃は、心の中のノートに、「佐藤聖」、「山口真美」の名をしっかりと書き込んだ。