「夢みたいだ…やっと、届いた…」

そう、思ったとき、目がさめた。

 

         ***

 

風早翔太は飛び起きると、まわりを見回した。

(どこだ、ここは?)

妙にきらきらとした、安っぽい内装の部屋だった。

(…もしかして、ラ○ホ?)

気がつけば、自分は全裸だった。

そして、ベッドのとなりには、シーツが人型に盛り上がっている。

(こ、この状況はっ!)

や、やっちまったのか?この俺が?

告白のあと、一気に最後まで?

いや、たしかにピンが「結婚」なんて言うから、つい想像しちゃってたけど!

たしかに、夢の中ですっごく気持ち良かったけれど!

たしかに、柔らかくっていい匂いとか、思ったけれど!

全然、覚えてないよ!

 

やっぱり、ここは黒沼に確認するしかないのか…

覚悟を決める。

 

頭までかぶったシーツを少しずらせてみる。

すると、ふわふわした茶色っぽい髪が…

(え?)

真っ黒な、まっすぐの髪じゃない?

黒沼、いつのまにパーマをかけたんだろう…

って、現実逃避してる場合じゃないっ!

「なななっ」

顔をのぞきこむと、

「ううーん」

と、こちらに寝返りを打ったその顔は、予想どおり、胡桃沢だった。

 

         ***

 

ベッドの上で、あうあう言っていると、胡桃沢が目をさました。

上体を起こすと、シーツがすべり落ちて…

 

(うわーっ)

 

胡桃沢の胸を、間近で見てしまった。

制服姿からは想像できない大きさだった。

(皆、あんなものをかくしているのか?)

それに、どうやら下も何も着けていないようだった。

鼻血が出そうだった。

正直、胡桃沢のことは、かわいいとは思っていたが女性として意識したことはなかった。

(もしかして、黒沼も脱いだらすごいのかっ!?)

 

 

 

 

(いや、そうじゃなくて)

どうして、こういう事態になったのか?

それは、胡桃沢が教えてくれた。

「風早、もう酔いはさめたの?」

そういえば、海岸でジョーが持ってきたコーラ、やけに苦かったような…

でも、舞い上がっていた俺はそれを一気飲みしちゃったんだ…。

「人が大勢いて、風早、爽子ちゃんとはぐれちゃって

…あたし、D組のほうに連れてってあげようと手を引っ張ったら、逆に引っ張られて…」

「じゃ、酔った俺が胡桃沢をむりやり!?」

「ううん、違うよ。…風早はあたしのこと、爽子ちゃんと勘違いしてただけ」

「‥‥‥」

「そして、私はそれに便乗しちゃったの…本気で抵抗してたら、いくらなんでも風早だって気づいてたよ」

‥‥‥

「私はずるいんだよ。風早が酔ってるのをいいことに…」

「でも」やっと、声が出せた。

「いいんだよ、そりゃあすっごく痛かったし、血もいっぱい出ちゃったけれど」

「!」

「あ、責任とれとか言わないから、安心してね。私、初めてが風早とでうれしかったんだから…絶対、そうならないって、あきらめていたのに…夢みたい…」

(俺も初めてなんだけどっ!しかもよく覚えてないしっ、どうか夢であってくれっ)

「…ただ、最中に風早に『さわこ、さわこ』って呼ばれたのは切なかったなあ…」

(あああ、穴、穴はどこですか…)

しかし、よく位置がわかったな、俺。

「…何もつけないで、三回もしたけど…多分、大丈夫だよねっ」

(いや、いや、いや、それはさすがにダメだろー)

「…もし、できてたとしても、風早に迷惑はかけないから…」

(もう、勘弁してください。もう何も考えられません)

「…ねえ、最後にきちんと、私の名前、呼んでくれない?」

嫌も応もなかった。俺はせめてそれぐらいはと、心をこめて叫んだ。

「…うめっ!」

すると、彼女はにっこり笑って、こう言った。

「わかった。大事に育てるね」