馬鹿2人再結成 卒業から何年経っただろうか。春原は杏と付き合っていて岡崎の娘が杏のとこを卒園した頃のもしかしたらあったかもしれない設定で進む話。 「はあ〜疲れた。…」 春原は学生時代と変わらず散らかっている寮の部屋に帰って着替えもせずにそのまま万年床に倒れこむようにして休む。 そのまま眠りそうになっていると寮母が春原に電話だと呼んできた。 「誰だよまったくもう、…まさか藤林か?」 あまりに意味の薄い悪態をつくがもしかしたら杏からの電話かと希望を持ちつつ電話をとりに行く。 「はい、もしもし!?」 春原が答えると。 『春原か?俺だ。爺さんが入院したからすぐに来い(あっ、朋也君嘘はよくないです)』 (あ〜杏じゃないのかよ、爺さんが入院した?って裏で聴こえてる声は渚ちゃんか。それより嘘なのかよ。あれ?岡崎かな?) 杏からの電話ではないことに不機嫌になりながら春原が答える。 「なんだよ岡崎?ああ久しぶりだな。で、爺さんが入院したから休めって?…まあ研修も終わったし少しは余裕があるけど」 (まてよ、こっちに気づかれてないと思ってるなら騙し返してみるか) 春原が黙って考えていると朋也が念を押すように続ける。 『休みはこっちが合わせるからそれでいいがとりあえず来いよ』 春原は考える時間を稼ぐように 「とりあえず休みはとってみるよ。じゃあ後でな。」 とせかすように電話を切り部屋に戻る。どうやって騙し返そうかと考えているうちに夜は更けていった。 ちなみについでに同じ街にいるはずの杏へも会いに行こうと考えていたが連絡するのはさっぱり忘れていた。言わずもがな先は見える。 さて当日、2人は駅前で待ち合わせあまりにも大きなトラブルはなかったがちゃんと落ち合うことができた。 春原の黒い髪にひたすら笑った後岡崎が先に話を切り出す。 「爺さんとこ行く前に先にちょっとファミレスに寄って行かないか?」 春原はそこに何かがあると思い構えつつ返答する。 「予定、決めてるんだろ?だったらそれに従ってやるよ。」 後ろからつけている不審な人物に気づきつつ岡崎は含み笑いが漏れているのは隠しきれていなかった。 春原はつけている人物には気づかず岡崎の含み笑いを不審に思いつつ店内に入る。 「いらっしゃいませ何名様ですか」 というようなお決まりのやりとりを済ませ案内された席に着く。 「へぇ、こんな寂れた場所にファミレスができてたのか。しかも可愛い娘もいるじゃん」 間髪いれずに岡崎が 「デラックスジャンボストロベリーパフェとアメリカンを」 とウエイトレスに素早く注文を済ませる。 「なあ、こんなところでパフェなんか食って恥ずかしくないのか?」 「そうだな、男2人で片方がパフェなんか食べてるのはおかしいけど俺は他人の振りしてるから安心して食ってていいぞ」 「僕が食うのかよ。ちょうど腹が減ってるからまあいいか」 注文も来ないうちに岡崎が話を振ってくる。 「春原、実はここのウェイトレスはナンパをされたがっているという噂があるんだ」 「いきなりなんだよ。・・・何っ、よし。任せろ岡崎」 「まあ待て、あんまり急ぐな。標的はあの小さくてクセっ毛の可愛い娘だ。ぬかるなよ」 「ああ、わかってるさ。よし行ってくるぜ」 親指を突き出しグッドラックとやるが岡崎の方はグッドエッチという高校の時のままの意味だった。 ファミレスなのだから呼べばいいのだがそれが気づかない春原だった。 さりげなくを装ってクセっ毛のある小さい娘に近づいて後ろから声をかける。 「ねぇ、彼女、仕事何時に終わるの?」典型的な文句を告げるが彼女が振り向いた瞬間春原が凍りつく。 「えっ、渚ちゃん?」と呟く暇もなく 「てめぇ、俺の渚に何声掛けてるんだ」とガラの悪い男に店の外に連れ出された。 「あっお客様っ」 遅れて店内からの視線やガタンという物音はあったが気づかないフリをして店から離れる。 「って、何やってんだよっ岡崎!」 「いや、バカそうな奴に渚がナンパされそうになってて腹がたったからつい。」 「岡崎がやれって言ったんだろ、僕は当て馬かよ」 「バカは否定しないんだな」 春原は半分泣きかけで諦めたように 「もういいから、わかったから、早いとこ爺さんとこに行こうよ。」 周囲の状況は置いてけぼりだった。 息を落ち着けてゆっくり病院につくと岡崎についてそのまま病室に向かう。 どこの病室かも聞いてなかったので事前にきていたのだろうと春原は思っていた。 しかし、いつの間にか周囲の景色はちょっと雰囲気の違う場所になっていた。 「な〜岡崎〜本当にここに爺さんがいるのか?」 「まあ、ちょっとまて…よし春原あそこに可愛い娘がいるだろ」 「ああ〜確かに可愛い娘だな、それがどうかしたのか?」 「彼女は彼氏が死んでリハビリに励む意欲を失った可哀想な娘なんだ。だからお前が慰めてやって欲しいと頼まれたんだ」 「そうか、この僕の面白さが役に立つなら慰めなきゃいけないよな」 誰に頼まれたかも疑問に思わない春原がパジャマ姿の問題の彼女に近づくと… 「そんなに落ち込むなよ、君は可愛いんだからその顔が台無しになるぜ」 モアベターでベタベタな台詞を吐く春原。 「僕は男なのに新任の医者にナンパされて落ち込んでるんだ〜」 半泣きのような声で叫ばれて慌ててとって返す春原。 戻り際に 「岡崎〜!もう岡崎には騙されないからなっ」 と叫びつつ戻ってくるが、看護師の「病院では静かにして下さいっ」という声とともにクリップボードと 別方向からの怨念のこもったような分厚い医学書が飛来してくる。 「ぬお〜っ」 何かを連想させつつも必死の形相で間一髪避け卑怯にも先行する岡崎と追っ手を撒きつつ病院から脱出して距離をとる。 「はぁ、はぁ、はぁ、岡崎〜。ジイさんが入院してるんじゃなかったのか〜?」 「あ〜あれ、嘘な」 「嘘かよ!そこでバラしたらこっちが騙し返してやろうと思ってた話使えないじ ゃん」 「ああ?春原にしては賢いな。よし、どんな内容なんだ?」 「よし、説明してやるよ。まずは病室に入ってこう言う『ジイさ〜ん見舞いに来たぞ〜。あれ?なんでそんなに口が大きいんだ?』 そこで岡崎が『それはお前を食べるためだ〜!』と襲いかかってきたところをどこからか杏がやってきて凶暴に岡崎を退治するんだ」 ずがん! 春原の即頭部に分厚いものがヒットした。 「あ〜死んだか?」 「アンタね〜誰が凶暴よ。後ろから付けてればあたしのこと散々無視して〜」 「まあ、その位にしてやれ杏。気絶してる奴には通じないから。起きてから改めてシメるぞ」 「そうねじゃあ先にあんたをシメることにするわ。ファミレスであんなパフェひとりで食べてコーヒー飲んで恥ずかしかったわよ」 「ちゃんと食ったのか。」 「渚が困ってたからでしょう。あんたと違って友達を見捨てるようなことはできないでしょ。 それに今回は春原を騙そうってそっちから話を振ってきて途中から忘れてたでしょ。 さぁてどうしようかしら」 それを聞いて岡崎は自分から杏に連絡を取っておいて待ち合わせのこと意外さっぱり忘れていたのを思い出し背筋を凍らせた。 「くっ、春原、後は任せた。」 岡崎がダッシュ。 「ちくしょー気づいてたのかよ。岡崎の馬鹿ヤロー」 聞こえないフリをすればいいのに律儀に反応して続いて春原もダシュ。 脱兎のごとく逃げ出す馬鹿2人。 しかし、杏は冷静にターゲットを定め2人に同時に辞書を投げつけて昏倒させる。 「じゃあ2人とも起きるまで待っててあげるわよ。それと陽平は後で別メニューね」                    おしまい あとがきです。 友人の滄海さんに影響されて春原と杏のラブラブ話を書くつもりがとりあえず春原を視点に書いてみようと思ったのが運のつき。 やはり春原にはラブラブよりシリアスよりギャグが命とばかりに突っ走ってました。 話の設定としては卒業して汐は預けて渚がアルバイトを続けてて杏と春原が遠距離恋愛な感じです。 大人になっていくにつれ馬鹿なこともできなくなるっていう一抹の寂しさも感じられるようにしたかったのですが残念。 しかも異様に短いまさにベリーベリーショートストーリー。 次回も機会があればいろいろ気をつけます。 このような拙作およびコピー本を流し読みしてくれてありがとうございました。では脳内妄想に逃げます。 2006/12/31 サークル水色吐息 代表  青にして鈍色の影葉ヘイズ