空にかざした手がキラキラと輝いているのを見ながらゆっくり気を失っていった

 

 

 

まるで夜更かしした後の眠気があるまま起こされたような気分でゆっくり目が醒

めた。がまぶたは非常に重いのでそのまま。

「ん」

少し呟いてみる。

なんだか喉が張り付いているようで不快だ。

明るい光があるわけでもないけどまぶたを閉じたままでもわかる光量がある。暖

かい布団から出たくないように身じろぎしてみる。体がぎこちない。

 

天国ってこんな感じなのか?ユウは迎えに来てないのか?と思いながら目を開け

てみる。

真っ白な天井、壁。顔を傾けると僕を覗き込んでいる深螺と目が合った。

「ほ〜っ」

なんだかとても安心したような気疲れしたような顔でそんな声を出している。

 

あれ?ユウじゃない?そしてここはベッドの上?

深螺は寝ている僕にのしかかってきて

「良かった。上手くいった〜。」

などと言っている。

再び疑問。あれ?僕は成仏したんじゃなかったか?

しかし、そう思っている間に体は不調を訴えてきた。背中や腰が痛い。

天国に深螺がいるのはおかしいし、痛みがあるのも本来の天国とは違う気がする

 

だんだん頭が覚醒してくるといろいろ考えが巡る。おかしなと思いつつすぐそば

にいる深螺に声をかける。

「あの〜」

っ〜〜くぐもった声だ。声を出した瞬間に気がついた。変なマスクをさせられて

いる。苦しくはないが鼻の上や口の周りに違和感がある。

これは重病人がよくやっている呼吸用のマスクじゃないだろうか。

「本当にあなたはには心配ばかりかけさせられます。今回は上手くいく自信がな

かったんです」

 

はい?なんのことだか

しかし、いくら鈍い僕でもすぐに気がついた。生きてる?

だって3年前のあの日、僕の肉体は死んでしまってるはずで

頭の回転が早くなってきた。

深螺のことだ僕の葬式も死亡届やなんかも全て偽造して遺体を隠していたって不

思議ではない。

きっと法律違反だけど。

「ちゃんと説明します」

どうやらもう正気を取り戻した深螺が説明してくれるらしいので聞き役になって

みる。

「3年前、蛍の死んだ後、私はあなたが霊体のままでいるのを助けて肉体はその

ままにしました。でも後で気がついたんです。もしかしたら復活できるんじゃな

いかって」

深螺はひと息ついて続けて

「確かに分の悪い賭けより低い可能性というより私の希望的観測でした。それ

でも肉体は残しておくべきだと思ったのでお葬式では偽物を出しました」

やっぱり。でもその後がわからない。

 

「異変があったのは《世界の意志》が拡散した後です。私が確認してみたらあな

たの肉体にはわずかながら霊力だけがありました。ここから先はあなたが話して

くれたことから考えた推論ですが」

深螺がもう一度息をきった。思わずぐっと喉を鳴らすが不快感があり何度か続け

る。

「アリスが蛍から霊体物質化能力を奪った後、最後にユウさんが《世界の意志》

となって世界中に霊力と共に拡散しました。それに奪われていた人や魂も元に戻

りました。ですからアリスが奪っていた分のあなたの霊力がわずかながらも戻っ

てきたんだと思います。そして私はもしかしたら蛍が復活できるようにユウさん

が何かしらしたのではと思い、いつでも復活できるように肉体を大切に保存して

いました」

深螺は慈しむような優しい顔になっていた。

「霊体物質化能力を持った本体の蛍がどれくらいで成仏するのかは事前にわかっ

ていましたから先に辺りり一帯の雑霊を排除したり魂を呼び込んための準備もで

きました。でも本当に戻ってきてくれるかは私でもわからなかった。だからみん

なにはさっき知らせたばかりです」

深螺がまた息を切って、溜めた。

「おかえりなさい、蛍」

とても優しい顔の深螺を見ながら僕は乾いた喉でかすれながらも答えた。

「ただいま、深螺」

今にもバタバタとした足音が聞こえそうだった。