次の話へ / SSページへ / TOPへ











永遠のアセリア
Recordation of Suppressor


37話 閉ざされた壁の先















 朝から全てが普段通りだった。起床の時間も、朝食の時間も。
 食事も特に代わり映えしなければ、いつも通りの者が作るのも変わらない。
 少し違ったのは、普段はしゃぎたがる年少のスピリットたちが大人しかったぐらいだ。今にして思えば、それだけ緊張していたのかもしれない。
 それでも大体は変わらない。変えないのが重要だった。決戦の朝であるからこそ、普段通りに過ごそうと。
 普段通りに望めば、いつもと変わらず力を発揮できる。そう考えてこそ。
 今はサーギオス帝都を守る秩序の壁から、徒歩で一時間とかからない位置に布陣している。
 ユーソカ、リーソカの陥落は思いの外、早かった。サーギオスの抵抗がさほどではなかったからだ。
 ここに至って、さしものサーギオスも戦力に陰りを見せ始めている。
 ――だからこそ戦力の出し惜しみがない、総力戦になると予想されていた。
 戦いの舞台は秩序の壁とその内側、サーギオス帝都に絞られている。
 食事を終え、移動を開始する。秩序の壁を遠巻きにしつつ、それぞれ配置につく。
 敵の戦力は不明だが、東にはユートとコウインの部隊が展開しているから東西で二分されているのは確実だ。

「離れようとも目的は一つ。帝国を打倒し、戦争を終結させること」

 今朝方、セリアが訓辞代わりにそんな内容を言ったのを思い出す。
 俺たちが抱える最終的な目的や目標は少しずつでも違うだろう。しかし、目下の目標は同じだった。
 だからこそ、俺たちはここに集っているのだと思う。或いは、これを縁とでも呼ぶのか。
 敵の襲撃を警戒しながらも時間が経過していった。
 正午を前にして、ようやく配置についていく。これは攻撃開始を正午に設定し、東西の部隊で足並みを揃えさせるためだった。
 布陣は横隊が二組。秩序の壁に沿うよう展開している。単純に前衛、後衛の並びと考えていい。
 東側の偵察隊を保護したことで、総勢は十八人にまで増えていた。
 俺は前衛の中央に当たり、右手側にはウルカがいて左手側にはヘリオンが見える。
 敵陣に突入する時は、俺たち二人が先陣を切る手はずとなっていた。
 不意に『鎮定』が微振動を始める。イオの『理想』からの神剣通信だ。
 俺だけでなく展開している全てのスピリットに同じことがされている。今回はイオが一方的に声を送るだけなので一方通行だ。
 聞こえてきた声はレスティーナ陛下の声だった。遠い空からの声は、ひどく身近な声として聞こえてくる。
 内容は、一言で言えば檄だ。
 そして気づく。いつの間にか人間も戦地に立つようになっていた。同じ場所に自ら近づこうとしたのか。
 やはり、少しずつ世界は変わり始めていた。

「私たちは勝ち取らなければなりません。人の未来のため、スピリットの未来のため、世界の未来のため」

 胸が強く脈打った。高揚のせいか――だとすれば柄でもない。
 だが、確かに。この戦いはそういう戦いだ。
 俺たちは今、大きな分岐点に立っている。この世界の行く末を占うであろう分岐点に。
 結果はまだ見えない。見えなくとも、自分たちに出来ることをやるのは変わらないはずだ。評価は後世の人間が頼まなくとも下すに違いない。
 剣の向こうから鬨の声が聞こえきた。うねるような音だ。奮い立っているのが、離れていても判る。

「我々は勝ち取らねばなりません!」

 胸がもう一度高鳴る。その通りだ。征こう。
 もはや今は戦う時だ。

「全隊、前へ!」

 神剣通信が終わり、新たに命令が下される。戦いが始まる。終止符を打とうと――。
 ラキオス側は前へ攻め寄せていく。
 一方のサーギオスは秩序の壁には籠もっていないようだ。神剣の気配を感じられない。
 しかし、秩序の壁を越えてすぐの場所に布陣しているらしい。
 秩序の壁は、外の街からのマナ供給が途絶えたことで、エーテルジャンプ機構のみならず、各マナを活性させる施設までもが停止しているためか。
 どうして外敵から身を守るはずの壁が、その外部に機能の大部分を依存しているのかは合点がいかないが。
 それでも、壁はやはり邪魔だ。いつぞやの法皇の壁に比べれば堅牢と呼ばないにしても。

「穴を開けます。破片に注意してください」

 後ろでマナが収束するのを感じる。
 ナナルゥの詠唱が途切れ途切れに聞こえてきて、すぐにそれも終わった。
 同時に前方の壁面が爆ぜる。ほとんど反射的に目元を隠す。
 前方で轟音と共に粉が舞い上がり吹き飛ばされた。衝撃の余波が頬を叩いて震わせていく。
 破片は届かない……というより、完全に砕かれているようだった。
 再び確保した視界の中では、壁に大穴が開かれている。
 敵に対応されるよりも先に穴を越えて秩序の壁の内側へと入り込む。
 サーギオスのスピリットたちは正面に展開していた。
 その数は多いが、正確な数は判らない。八十はいるようだが、百には届くまい。
 四倍強の数を相手にしなければならない上に、突破後もまだ戦闘が控えているはずだった。
 その時、左にいたヘリオンが突然後ろに向かって翼を広げて飛んだ。

「敵がいます!」

 ヘリオンが叫ぶ。振り返ると、壁の裏側にサーギオスのスピリットたちが少数ながらいる。
 今の今まで神剣の気配を完全に殺して、こちらへの奇襲を狙っていたのか。
 ヘリオンは今にも飛びかかろうとしていた黒スピリットに逆に斬りかかっていた。
 彼女の動きで、他の者も伏兵の存在に気づき、急いで体勢を整え直そうとしている。
 もしも、このまま気づかないで進んでいれば、前後両面から攻撃を受けて瓦解させられていた公算が高い。
 すぐに正面に視線を戻すと、敵の全軍も動き始めていた。
 奇襲こそ未然に防いでいたが、今のままでは当たり負けして蹴散らされてしまう。
 ならば、味方が整うまでの時間を稼ぐしかない。

「ウルカ! 後ろの伏兵は任せて、俺たちは予定通り正面の主力を抑える!」
「了解しました。背中は手前が守りましょう」

 本当は全員で正面から突入するはずだったが、今となってはそれも適わない。
 自殺行為かもしれないが、それはこのままでもそうだ。それなら敢えて進むのみ。
 前へ駆け出す。『鎮定』の力を解き放ち、体が押されるように増速する。
 その上でウルカが追い抜いていく。背中を守るには不自然な動きだが、今はそれでいい。
 取り付くにはまだ遠く、敵の方でマナが活性化していくのが判る。
 なんらかの神剣魔法の準備に入っているのだろう。このままでは狙い撃たれるが、対策は講じてある。
 その対策こそが、この戦いの鍵を握っていると言っても過言ではなかった。
 ウルカの翼が大きく広がる。巨大な鳥を思わせる後ろ姿だ。

「漆黒の焔よ、我らが手足となるハイロゥを焼き尽くし、一時の安息を……バニシングハイロゥ!」

 広がった翼が一瞬身震いするように大きく揺れて、羽根が一斉に舞い落ちていく。
 ウルカの翼は消え、散っていく黒い羽根は光に変わりながら広がっていく。サーギオスの主力部隊にまで光は届く。
 前方の敵も後ろの味方も問わずにハイロゥが消えていく。ある者は翼を失い、ある者は球を失う。
 敵の神剣魔法も半ば強制的に中断される。
 ハイロゥの喪失。それはほとんどのスピリットから全力を奪い、得意とする戦い方さえ奪うこととなる。
 違ったのは、ラキオス側は事前にそれ知っていたから動揺がないこと。サーギオスには突然のことで、無言の動揺が広がったこと。
 そして、ラキオスにはハイロゥの有無に影響を受けない者――俺がいる。
 今度は逆にウルカを追い抜く。動揺している敵に向けて、強烈な一撃を見舞う。楔の如く一撃を。
 正面の敵を見据える。青スピリット、翼がないことに戸惑いを隠せていない。
 魂を飲まれているというなら――。

「動揺も忘れられればよかったのに」

 『鎮定』を叩きつける。マナが純粋な力として放出され、敵ごと周囲を打ち砕く。
 敵部隊の動きはまだ鈍い。手近なスピリットを斬りつつ突入する。
 初撃で穴を開けたならば、以降の攻撃で血道を切り開いていく。
 その中にあって、敵の動きを見ていく。
 混乱から素早く立ち直り、周囲に指示を下すスピリット。それこそ、この局面で優先的に狙う相手だ。
 見つける。左手側、赤スピリットが聞き取れないほどの早口で何かを周辺に伝えている。
 『鎮定』を大きく薙いで、周辺の敵を打ち払う。その間隙に、体を前に出す。
 敵の攻撃をやり過ごしながら、一気に距離を詰める。
 接近に気づいて、赤スピリットも背を向け逃げようとするが、そのまま背中から斬りつける。
 すぐに後ろへ大きく飛び下がり、ウルカと合流し直す。
 ウルカもすでに何人か斬ったのだろう、服に返り血が着いていた。
 再度、前に出て敵を掻き分けるように進む。立ち塞がる敵を斬っていく。
 ウルカはこちらの背を意識しながら、側面の敵と切り結んでいた。
 剣を振るう度に返り血を浴び、自分自身も無傷ではいられない。
 血の臭いが染みつくような嫌悪感に襲われる。それでも止まってはいられない。
 一人斬る度に、すぐに別の敵が現れる。
 すでにサーギオスも混乱から回復しきっているように思えた。その代わりに進攻が停滞している。足を止めるのは成功していた。
 その内に後ろから味方のスピリットたちも追いついてくる。伏兵を排除し終えたのだろう。
 戦況は傾こうとしている。
 戦いは混戦で始まり、今度こそ総力戦に移ろうとしていた。
 後は大勢が決するまで早い。
 寡兵ながら、正面からの戦いでサーギオスの部隊を突破することに成功し、サーギオスの残存戦力は帝都まで後退しだした。
 だが、ラキオス側の消耗も決して無視できない。
 確認できてないだけで、もしかすると誰かやられたかもしれない。皆が皆、無事だという保証はどこにもなかった。
 一息ついてると、セリアが一同に指示を出す。

「動ける者は今より追撃に移ります。重傷者は治療が終わり次第、まとまって追ってきて。ハリオン、そっちは任せるわ」
「はいはい〜」

 セリアは重傷者と言った。つまり多少の傷は我慢しろと言うことだ。
 実際、セリア本人も右肩に血を滲ませていた。そのぐらいの傷は追撃しながら治すつもりなのだろう。
 さして間を置かずに敗走した敵を追う形で、サーギオス帝都へと進んでいく。
 顔触れは俺を含めてセリア、ウルカ、ヒミカ、ヘリオン、ネリー、シアー、アリカと西側部隊の半数を切っていた。












 しばらくの間、会敵することなく道を進んでいく。裏を返せば、敵を見失ったとも追いつけないとも考えられるが。
 すぐ横ではアリカが全員に治療を施し終えたばかりだった。ほとんどが軽傷だったといえ、傷を負ってない者が結局一人もいなかったからだ。
 走りながらの治療だったためか、彼女の息はいくらか上がっている。それでも速度はまったく落としていなかった。

「……大丈夫か?」

 なんとはなしにアリカに声をかけると微笑み返された。

「そっちこそ無理してません?」
「いや……無理はしてない」

 もっとも体にのしかかるような疲労感はある。『鎮定』の力を引き出した後につきまとう反動だ。
 慣れはしないが、そういうものだとは割り切っていた。
 そして、この戦いでは無理に入らない程度の疲労感だ。

「だったら私も無理はしてません」
「だったらって、なんだ」

 それとも俺が無理をしていると認めたら、彼女もそう認めたのだろうか。
 ……よく分からない。
 とりあえず、気にすることはないと判断する。
 それにしても、ここまで来て抵抗を一切受けなくなると逆に不審に感じる。
 前方のセリアに話しかける。

「いくら何でも順調すぎないか?」
「……罠、かしら?」
「そこまでは分からないが嫌な感じだ」

 結局、不安を拭えないままに帝都の入り口にたどり着いた。
 巨大な門があった。硬質で物々しい作りの門は、そこらの建物よりも遙かに高く広い。
 古びているせいか、金属の色はくすんで見える。或いは深い影を浮き彫りにしていると言うべきか。
 陽の昇る空とは、ちょうど対照的に見える。
 門は外壁と一体化し帝都の外周を覆っているらしい。入り口からでは全容を掴めないが、そうだとしても何ら不自然とは思えない。
 外敵から身を守るには過剰すぎる。法皇の壁にしても秩序の壁にしてもそうだが。
 ――それとも、これは。

「塞いでいる?」

 外に出られないよう、閉じこめるかのように。
 それはサーギオスという帝国が抱える負の印象に、そのまま繋がるような気がした。
 だとすれば、あそこは魔窟か。訳の解らない存在がたむろす場。それに(まつ)ろう者たちの住処。
 それとも、もっと単純に――相容れなくなった者たちか。

「そっちも無事だったか」

 いきなり声をかけられた。久々に聞く声だ。
 ユートが壁の曲がり角からこちらに向かってくるところだった。
 真っ先に反応したのはネリーだ。

「ユート様!」

 ほとんど体当たりの勢いでネリーはユートに抱きつく。
 こういう時のユートの反応は決まっていた。驚きながら、それでもしっかりと抱き止める。
 この時もやはりそうだった。
 その様子をシアーとヘリオンは羨ましげに見つめている。

「ネリーばかりずるい〜」
「な、なら私もっ!」
「あんたはやめときなさい、ヘリオン」

 ヒミカの呆れ声が終わるか終わらないかの頃に、ユートと同じようにコウインとキョウコ、アセリアとエスペリア、オルファが来る。

「勝手に先に行ったと思ったら、なんて羨ましいことをしてるんだ、悠人!」
「こんな時に何バカなこと言ってんのよ! 悠もネリーちゃんを下ろす!」

 全力で本心を吐露したであろうコウインを、キョウコはハリセンで殴り飛ばす。
 それを見て、ユートもすぐにネリーを下ろした。
 そんなユートを見て、アセリアがぽつりと呟く。

「……浮気性?」
「ち、違う! そんなつもりは全然ないんだ!」

 ユートは大慌てで否定する……決戦前の再会だとは思えないが今更言うまい。
 キョウコの一撃を受けたコウインは咳払いをする。表情からは笑みが消えている。

「入り口はどうやらここだけみたいだな。俺たちは反対側から来たんだが、そっちはただの壁だった」

 コウインは門を見上げる。俺たちも釣られるように門を見上げた。
 分厚い金属の固まり。しかし、マナが張り巡らされているとかそういうことはない。
 コウインは『因果』を担ぎ上げ、力を収束させた。
 そのまま門まで駆け寄り一閃。『因果』は門の一部を突き崩す。

「ここから進めるけど……覚悟はいいな?」

 皆、思い思いに頷く。
 コウインも頷くと、ユートに言う。その表情はいつになく真面目だった。

「俺たちの隊長はお前だ、悠人。隊長らしく何か言ってくれ」
「……月並みだけどさ」

 そう前置きする。ユートは一人一人の顔を見ていった。

「絶対に死ぬな。俺たちは生きるために戦っているんだ」

 生きるために、か。俺は本当にそうだったのか、そんな思いが頭を過ぎる。
 アズマリアを失ってから、本当に能動的に生きようとしてきたのだろうか。
 ……そうに決まっているか。でなければ、戦ってまで生きようとしてこなかったはずだ。

「行こう」

 自分で驚くぐらいに明瞭な声で口にしていた。
 皆の視線が集まる。意外だったのかもしれない。少なくとも、俺自身が意外に思っている。

「ああ、行こう。これで終わらせるんだ」

 ユートが応じる。これで最後だ。長い戦いもこれで終わる。
 その先に何が待ち受けるのか、まだ分からない。
 だけど、戦うしかないのだろう。

(……見届けてくれ、アズマリア)

 俺の戦いは、貴女の死から始まってここに行き着いたのだから。
 そうしてコウインの開けた穴から踏み入る。歓待も抵抗もない。
 サーギオス帝都は侵入者の俺たちを静かに迎え入れた。
 街並みは静まりかえっている。住人はいるはずだが、家の奥にでも閉じこもっているのかもしれない。
 ユーソカやリーソカではそうだった。住人は自分たちから進んで外に出てこようとはしなかった。さりとて、外に出るのを拒むでもない。
 もっと無気力で――生きること、それ自体に興味を失ってしまっているようだった。
 両手側に見える街並みに沿って疾走していくと、その内に街並みが途切れて消える。
 そして正面方向に巨大な建物が見えた。サーギオス城だ。
 遠目の印象ではせいぜい感じるのはラキオス城よりも大きそうだとか、その程度だった。
 しかし、近づくにつれて認識も変わってくる。

(ああ、でもこれは……)

 どうしてだろう、見ていると陰鬱に感じるのは。
 空はよく晴れ渡っているというのに、そこだけ明かりが射し込まないような気がする。そんなはずはないというのに。
 城門を通過しても、まだ敵の気配は感じられない。

「このまま城内に突入するぞ!」

 ユートが命令を下す。自ら最前列を駆け、ユートは入り口へと向かう。
 その後にコウインとキョウコ、アセリアらが続く。
 俺はほとんど反射的にその横を併走する。側面から突かれるようなら、それを防ぐためだ。
 先頭のユートが城内に入るか入らないかの時に、ついに敵性の神剣気配を感知した。
 城内からだ。ユートは構わず走り抜ける。城内に入ってすぐ、広間に出た。
 正面に幅の広い階段があり、左右には通路が見える。
 ユートは迷わず階段に足をかけた。左右の通路からも騒々しい足音が聞こえてきたのはその時だ。

「ここまで来て……!」
「ユート殿たちは先に進んでください! アリカ、援護を頼む!」
「承知!」

 二人が左の通路へと向かう。二人だけには任せていられない。
 即座に『鎮定』の力を再解放した。そのまま右の通路に向かい、その天井へ『鎮定』を突きこんだ。
 罅が入るや否や天井の崩落は一瞬で来た。瓦礫と化した天井が通路を塞ぐ。もっとも時間稼ぎになるかどうかも怪しい。
 すぐに左に向かった二人と合流する。

「これで三人だ。もう一度、足ぐらい止めてやる」
「三人じゃなくて五人!」

 ネリーとシアーの姉妹が割り込んできた。

「お前たち……」
「ここで敵さんの足を止めれば、ユート様たちは邪魔されないんだよね?」
「だったらネリーたちが頑張るしかないじゃない!」

 ……今日ほど、この姉妹を頼もしく感じた日はないかもしれない。
 階段を見上げると、ユートたちの姿はすでに見えなかった。
 それでいい。俺たちはそれぞれの場で全力を尽くすのみだ。
 決着の時は近づいている










37話、了





2007年6月8日 掲載。

次の話へ / SSページへ / TOPへ