50 名前:Socket774[sage] 投稿日:2008/06/19(木) 01:23:40 ID:mvd+dUV/ この流れなら言える。長いので読みたくなければ透明にしてくれ 私には男手ひとつで俺を育ててくれた親父が居て、 週末、退職間際の親父とPC組んだり改造したりするのが日課だった。 しかし、もともと親父には自作の趣味は無かった。私が、自分のPCぐらいは1度やってみないか?と切り出したのが始まりだった。 真面目な親父は、私から聞いたり、自作誌を急に悪くなった視力で・先天性の色弱の目にも関わらず時間かけて読んでいた。 親父には無理な趣味では?と気になり、“あんまり無理すんなよ” と声かけたら、 「俺には難しいかも知れんが精一杯やりたいんだ、やらせてくれ」 と頑として聞かなかった。 それでも、色分けされているRESET/PW-PINなどは本当に困り果ててたようだ。その度に俺に確認が求められ、ウンザリし喧嘩になることもあった。 そして、とうとう言ってしまった、“もう、やめろよ、どーせ出来ないんだから。”  言ってハッとした。吐いた言葉を飲み込みたかった。私が、言い訳、弁解・・・する前に 親父は低く「そうか・・・そうかもな」と、かすかに笑って、首を少しうな垂れた。  その日から、親父は私の暇な時にしかPCを弄らなくなった。 51 名前:Socket774[sage] 投稿日:2008/06/19(木) 01:25:24 ID:mvd+dUV/   そんな事があって3ヶ月くらい経った日、親父は満面の笑みで 「電源買ってきた、お前、今週誕生日だろ、コレやる! 良いの選んできたぞ、お前も中々だと言ってたSeasonicだ。 」 突然の出来事に言葉は詰まり、ありがとうの言葉は出ず、 “い、いいの? ” 渡された紙袋の中にはSS-650HTが入っていた。発売した時期でまだ値下がりしてない時期だと記憶している。 “これ、一番高い奴、ホント嬉しい、ありがとう”  親父「ああ、まあ・・め、迷惑だろうけど、い、色々教えて貰ってるからな、か、感謝の印だ」と、しどろもどろ。 “コレ、全部国産キャパシタって噂で長持ちなんだって、5〜6年くらい楽勝で保つよ、きっとね! ありがとう ” と、箱から目を離し見上げて親父に言った そのときの親父の顔、なぜか・・・・・・ほんの一瞬戸惑うように見えた。が、 「だろう、そうだろう? 選んだ甲斐あったよ、そうだな、10年ぐらいもってもらわないと!!!」といつもの笑顔になった。 私はその時の親父の顔を 疑問・腑に落ちないままに、ちゃんと・・・最初の表情のわけを親父に訊かないといけなかったのだ、と思う。  親父の誕生日は俺の4ヵ月後だ。ちゃんとお返ししなきゃな、と思いつつ、2ヶ月経ったある日。 職場に、親父の家の近所のおじさんから電話があった。いつも親父の家に遊びに来る仲間で、その時も電話で会う約束してたようだ。 「トイレで・・・○○(親父)が倒れた。息なかった。救急車で、、今病院だ」と。  真っ青になり駆けつけた。 医者は、低い静かな声で言った、 「本人には自覚症状もかなりあったはずです。ご家族にも一度来て頂く筈だったんですが。体に複数転移してて進行が・・・・・・ トイレで倒れたのは貧血が・・・・・・ ・・・・・・・・・」 信じられなかった。医者の言葉が遠くなって途中から聞こえなくなっていた。 53 名前:Socket774[sage] 投稿日:2008/06/19(木) 01:26:20 ID:mvd+dUV/ それから事務的に葬儀は済んだ。 気が抜けた私を見かねて、おじさんが遺品の整理を始めてくれた。 親父の荷物は少なかった。当然だ。働いているときは忙しくて、趣味とかほぼ無かったし、物を買うお金はあまり無かったから。 おじさんは、私にぐちゃぐちゃになってシワを再度伸ばしたような方眼紙を見つけて、持ってきてくれた。 方眼紙の裏には訂正やら書き直しやら散々直した後があり、見慣れた親父の字があった。(きっと清書前だろう) 54 名前:Socket774[sage] 投稿日:2008/06/19(木) 01:26:41 ID:mvd+dUV/   ----・・・・すまん、○○(私の名前)には、生活も満足させられず、世話になってばかりだった。   お前の勧めで始めたパソコン組み立てもなかなか上達せずに、楽しみも邪魔したな・・・。   本当にすまない、もっとちゃんと一緒にやっていきたかったが、体が===(訂正)==付き合う時間===(何度も訂正)   (読めない)      しかし誕生日にお前に買った電源、あのSeasonicの電源だけは、   CPUが世代が変わっても、   メインボードが変わっても・・・ハードディスクが壊れても・・・きっと、   パソコンパーツの中で一番、お前と一緒、もう駄目な俺の代わりに、お前のために、より長く役立ってくれるのじゃないか、と期待して選んだ。   それにな・・・・・・パソコンの命を送り込む電源・・・・・・この早々に朽ちる体を持った俺にとって、なんだか眩しかった。   人が持ってる生命、電源にはある筈も無い命が、まるで俺の命と重なるように思えた。 俺よりは、きっと長生きしてくれるだろう。だが、   どんなに良い電源だっていずれ壊れる。だから良い、それで良いんだ、半永久に壊れないものは選びたくなかった。    ただ、お前は、昔から優しい・・・脆い部分あるから、この電源が動いているうちは、後悔していい、悲しんでいい。   だがもし、この電源が止まった時は、俺の事は忘れてしまえ。 もう後悔はするな。 振り返るな、前だけを見て進め。   この電源の寿命は、お前の立ち直るための充電期間だ。 長いぞ。 立ち直って忘れるには十分すぎる時間だろう。   モノに思いを託すのも馬鹿げた話だが・・・・・・俺は、よく==(訂正) お前を支えになるような方法が思いつかなかった。   頼りにならなくてごめんな。出来ないのにムキになった。焦ってすまなかった。お前とずっと一緒に居たかった。 ・・・・・。あとは少しばかりの思い出を、少しばかりの預金がある事を教えてくれた。葬儀にはこの金を充ててくれ、と。 55 名前:Socket774[sage] 投稿日:2008/06/19(木) 01:28:42 ID:mvd+dUV/ 読み終えた後は、もう息が出来なかった。言いようの無い、伝えられなかった思いだけが溢れてきた。 私は1人立ちなんかしていない、親父に終始ずっと負ぶわれていたことに気づいた。なのに、あの仕打ち・・・・・・ごめん、本当にごめんなさい。 あれから時間は経ったけど、胸が締め付けられるように痛い。謝りたいのに声は届かない。 けども、親父の電源は異常もなく動いている。親父に許された期間。この時間を大事にしたい。 すまん、スレ汚しだが、これで終わりにする。皆の電源が良い働きをすることを願って。 【HM】静音電源Seasonic シーソニック Part12【HT】