オルファ(俺:トレーナー セフィー  :トロピウス レーナ   :ギャロップ アルス   :ボスゴドラ ミル    :ミロカロス セレン   :サンダース フィン   :オオタチ  ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 暗闇の中、俺は目を覚ます。 息が荒い、心臓の鼓動が早い、 ここは・・・どこだ・・・? 辺りを見回すと、目に入ってきたのはいつも通りの部屋、 隣ではセフィーが寝息を立てていた。 ・・・夢・・・か・・・? いや、あれは夢じゃない、 あれは俺の記憶、 消す事のできない、黒い過去・・・ 最近、幸せな事が続いたからか忘れかけてしまっていた。 この夢は、きっと俺への戒めなんだろう・・・ 俺は手を組み、明るみ始めた空に祈る。 こんな事で、俺のしてきてしまったことが許されるわけでも 俺が奪ってしまった、たくさんの命が戻るわけでもないけれど せめて彼らが、安らかに眠れるように・・・ 『黒の記憶』    第1章〜戒めの夢〜 「ねぇオル兄、今日はどうしたの?上の空って言うか、ボーっとしてるって言うか」 フィンにそう聞かれたのは昼食のときだった。 「そうだよ、どうしたの?なんか悩み事?」 すかさずセフィーも聞いてくる。 気づくと、他のみんなも心配そうにこっちを見ている。 表には出していないつもりだったが、どうやらバレバレだったようだ。 「・・・そうだな・・・ちゃんと話した方がいいか・・・」 みんなに心配かけたくなかったから黙ってたけど、 それが逆に心配させちまったみたいだな・・・ 「夢を見たんだ。昔の、セフィーに再会する、少し前の、な・・・」 自分で言っておいてなんだが、これでは伝わらない事は明白だ。 みんなに出会ったのは、その後のことだからな・・・ 案の定、みんなはてなマークを浮かべている。 「?、どういうこと? マスター昔になんかあったの?」 そう聞いてきたのはセレン、不思議そうに首をかしげている。 俺はため息をひとつつく 「俺は・・・以前Re・ロケット団の幹部だったんだよ・・・」 「え・・・?」 「うそ・・・でしょ・・・?」 「そんな・・・」 「本当・・・なんですか・・・?」 みんなが息を呑む。 ―Re・ロケット団― 旧ロケット団が解散したあと、その残党を集めて作られ、萌えもんの改造や実験などを行っていた組織。(詳しくは紳士スレまとめのダイゴ氏のSS参照 もうすでに壊滅したとはいえ、そんなところの幹部をしていたと知ったんだ、無理も無い。 しばらくの間、言葉を発する者は誰もいなかった。 「・・・ううん、本当だよ。オル兄は昔、Re・ロケット団の幹部だったんだ・・・」 その気まずい沈黙を破ったのはフィンだった。 「え・・・?フィンちゃんしってたの・・・?」 ミルが驚いて尋ねる。 「うん、僕はそのことは知ってたんだ、その経緯は知らないけど・・・」 「ああ、フィンは・・・いや、これはまた今度話そう・・・今は俺の事、だな・・・」 一瞬それそうになった話を元に戻す。 「うん、教えて、オル兄のこと、どうしてそんなことになったのか」 「わたしも、知りたい、マスターのこと」 「教えてください、オルファ様」 「ますたー・・・」 「話して、くれるわよね・・・?」 みんなが俺を見つめる。 「わたしも・・・」 そのとき、今まで黙っていたセフィーが口を開いた。 「わたしも知りたい、わたしと再会するまでに、お兄ちゃんに何があったのか・・・」 「分かった・・・しかし、それだと結構長くなりそうだが、いいか?」 俺はみんなを見渡す。みんなも俺を見つめ返す。 返事はなかったが、それで十分だった。 「じゃあ、そうだな・・・Re・ロケット団のことを話すなら俺の生まれから話す必要があるな・・・」 そして、話し始めようとした時 「あっ、そうだ、オル兄」 再びフィンが口を開いた。 「何だ?」 「もちろんセフィー姉との再会話もくわしくね♪」 何を言うのかと思ったら・・・ はりつめていた空気が緩む。 みんなの間に笑みが広がる。 雰囲気が少し明るくなる。 フィン、お前はすごいな・・・ 「ああ、分かったよ」 俺はフッとわらって話し始めた。 「俺はな・・・ハーフなんだ」 「ハーフ?」 「要するに、両親が人間と萌えもんだってことよ」 セレンにレーナが説明する。 「そうだったんだ・・・でも、それって別に珍しい事じゃないよね」 「そうだな、ハーフ自体は特に珍しいものではない」 フィンの質問に俺はうなずく。 「だが、ここが重要だからよく聞いてくれ・・・俺は人間の父とミュウの母の間に生まれたんだ」 「え・・・?」 一瞬の沈黙、みんなの顔に驚きの表情が広がる。 「ちょ、ちょっと待って、ハーフって母親と同じ種族になるんじゃないの!?」 「ええ、それっておかしいんじゃ・・・」 「どういうことなんですか?」 「それじゃあ何でマスターは人間なの!?」 みんな口々に疑問を叫ぶ。 俺は手を前に出してみんなを静める。 「・・・とりあえず落ち着け、普通に考えておかしいって事が分かってもらえれば十分だ」 俺は一冊のノートを取り出す。 「これを見てくれ」 「なに?それ、日記?」 フィンが不思議そうにノートを見る。 「ああそうだ、これは俺の父の日記、ここに俺の出生について書かれている」 日記をぱらぱらとめくる 「本当なら、俺の父と母の出会いから話した方がいいんだろうが・・・時間がかかりすぎるし、俺のことには直接関係ないから、今はおいておこう」 俺はあるページで手を止める 「さて、前置きとして父のことを話しておかないとな・・・俺の父は元科学者で20数年前のミュウの調査団の一員だった。  その調査先、つまりは南アフリカで母に出会ったわけだが・・・」 「あら?その時に発見されたミュウはフジ博士が出会った1人だけって聞いてたけど・・・?」 その言葉にレーナが首を傾げる。 「ああ、母のことは公にはなっていない。父が隠し通したんだ。当時、母のことを知っていた人間は父を含め3人だけだ。まぁ、これ以上はこっちを聞いてもらったほうが早いだろう」 そう言って、俺は日記を読み始めた。