オルファ(俺:トレーナー セフィー  :トロピウス レーナ   :ギャロップ アルス   :ボスゴドラ ミル    :ミロカロス セレン   :サンダース フィン   :オオタチ  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 オルファの父:人間 (日記内表記 私 オルファの母:ミュウ(日記内表記 妻  彼女 父の友人  :人間 (日記内表記 友人 彼 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「これは今から20年ほど前に父が書いた日記から、俺の生まれにかかわる物だけを抜粋したものだ。・・・じゃ、いくぞ・・・」 そう言って俺は日記に目を落とす。 「―年―月―日・・・・・・」 『黒の記憶』    第2章〜ミュウの息子〜 ―年―月―日 南アフリカから帰国してそろそろ2年が経つ。 今日、突然妻に子供がほしい、と言われた。 妻の願いはもちろんかなえてあげたいと思う。 だが、彼女は体が弱い、それも生まれつきだという。 私は彼女が心配だった。 ミュウツー計画の事もある。 あれほど悲惨な事件はない。 生まれたとしても、無事に育てられるかどうか・・・ 結局今日は、もう少し話し合おうという事になった。 ―年―月―日 南アフリカの調査の時に知り合った友人に連絡を取った。 彼は研究者であると同時に医者でもある。 妻が子供を産んでも大丈夫かどうか、診察してもらうつもりだ。 ―年―月―日 この前に連絡を取った友人を訪ねた。 妻のことを話すと、とりあえず検査してもらえる事になった。 だが、いろいろと準備が要るらしいので、とりあえず明日という事になった。 何もなければいいのだが・・・ ―年―月―日 友人から聞かされた検査の結果は予想もしない事実だった。 妻は、子供を望めない体だというのだ。 おそらく小さい頃に重い病気か何かにかかったのが原因らしい。 それを聞いた妻の落ち込みようはひどいものだった。 彼女のことを考え、今日は泊めて貰えることになったが・・・ 私は、妻の願いのひとつも、かなえてあげられないのか・・・? ―年―月―日 友人の家から帰る直前、私は彼に呼び止められた。 医者として、本来こんな事を言ってはいけないのだが、という前置きをして 彼がした話は、信じられないことであった。 私と妻の子供を作れる可能性は無くはないというのだ。 わらをも掴む心境だった私は、彼に詰め寄った。 だが、彼がこれ以上のことを話すことはなかった。 医者として、これ以上話す事は出来ないという。 しかし、彼はおそらくヒントにはなるだろうと言って、ひとつの封筒を渡してくれた。 そして、彼は最後に、これは私たちの子供を作れる可能性であり、妻が子供を生める可能性ではない、と言った。 いったい、どういう意味なのだろうか・・・ ―年―月―日 妻は、家に帰ると塞ぎ込んでしまった。 私は、少しの望みを託し、友人にもらった封筒をあけてみる事にした。 その中に入っていたのは2冊の論文、 『メタモンの変身能力』と『クローンの培養技術』についてが書かれた物であった。 クローン、ここに友人が口を閉ざした理由と、妻が子供を生める可能性ではない、と言った理由があるのだろうが・・・ これが、どういうヒントになるのだろうか・・・? ―年―月―日 『メタモンの変身能力』の論文を読んでいたとき、ある記述が目に留まった。 メタモンの変身能力はメタモンの体の9割をしめる万能細胞と呼ばれる細胞によるものだという。 万能細胞は様々な細胞に瞬時に変わることができ、また戻ることが可能らしい。 これを医学転用出来れば、事故や病気で失った体の機能を再生させることが可能になるというものだった。 だが、これでは根本的な解決にはならない。 第1に、医学転用はまだ実現していない。 第2に、仮に出来たとしても、大掛かりな手術に妻の体力が持たないだろう。 やはり友人の言うとおり、妻が子供を生むことは出来ないようだ。 一体どうすれば・・・ ―年―月―日 今日は『クローンの培養技術』の論文に目に留まる記述があった。 クローンは1つの元となる細胞があれば作り出せる、というものだった。 つまり、私と妻の遺伝子を併せ持った1つの細胞さえあれば、私たちの子供を作り出せる可能性があると言う事だ。 だが、妻はその元となる細胞を作り出す事が出来ない。 それゆえ、子供を望めない体なのだから・・・ ―年―月―日 結局どちらの論文にも、あれら以外に目の留まる記述は無かった。 一瞬、諦めかけた時だった。 私はあることを思い出した。 私の妻の種、つまりミュウはへんしんが使える。 要するに、彼女は万能細胞を持っている可能性が高いということだ。 彼女の遺伝子を持った、どんな細胞にもなりえる万能細胞、 もしそれがあれば、クローン技術で私たちの子供を作り出すのに必要な 私と彼女の遺伝子を併せ持った細胞を作り出せるかもしれない。 かすかに希望が見えてきた ―年―月―日 やはり妻は万能細胞を持っているようだ。 もしかしたら友人はこの事に気づいたのかもしれない。 それであの2つの論文を渡してくれたのだろう。 妻にその事を話すとそれまで塞ぎ込んでいた彼女は、久しぶりに笑顔を見せてくれた。 明日から、実験を始めることにする。 ―年5月16日 実験を始めてから、そろそろ一年が経つ。 未だ成功の兆しすら見えてこない。 私は、妻の万能細胞に私の遺伝子を入れ、培養カプセルに入れる、という 理論上は正しいはずの動作を再び行う。 やはり、自らの傲慢で生命を作り出す事など不可能なのだろうか・・・ そう思った、その時だった。 私は、一瞬目を疑った。 目の前の細胞が、ゆっくりと分裂を始めた。 ゆっくりと、ゆっくりと、1つが2つになってゆく。 私は声も出せず、その光景を見守っていた。 2時間、3時間、いやもっと経っただろうか、 それが終った時、私はようやくわれに帰った。 成功だ・・・ なぜいきなり成功したのかは分からない。 だがこれで・・・私たちの子供が・・・ ―年8月16日 あれから3ヶ月が過ぎた。 私たちの子供は順調に育っている。 どうやら男の子のようだ。 本音を言えば、ここまでうまくいくとは思っていなかった。 もし居るのなら、神に感謝したいところだ。 そして、友人にはいくら感謝しても足りないぐらいだ。 ・・・だが、1つ気がかりな事がある 息子はミュウの姿をしていない。 尻尾が生えていないし、耳の位置も違う。 本来、ハーフは母親と同じ種に生まれるはずだが、なぜなのだろうか・・・ ―年11月16日 あれから半年が経った。 息子はほぼ完全に人間の姿をしている。 本来ハーフには使われないクローン技術を使ったからなのか、 万能細胞に頼ったからなのか、 ミュウの姿にならなかった原因は分からないままだ。 なんにせよ、このまま無事に生まれてくれる事を願う。 ―年5月11日 あれから約一年。 今日、ついに息子が生まれた。 厳密には培養カプセルから出しただけだが、それでもこの世に生まれてきた事に変わりは無い。 妻は、泣いて喜んでくれた。 話し合いの結果、息子のの前は『オルファ』に決まった。 ともかく、無事に生まれてくれて本当によかった。 だが、やはり心配なことはある。 オルファは傍目には人間の男の子となんら変わりは無い。 しかし、本当にただの人間として生まれたのだろうか、 そうであるならば、本当によかったと思う。 もしそうでなかったとしても、この子には幸せになってほしいと願う。 「―っと・・・この辺りが俺の生まれに関する記述だな・・・」 俺は日記を閉じ、みんなを見回す。 「・・・クローン・・・技術・・・」 「・・・どうして、今まで何も言ってくれなかったの・・・?」 「そうだよ・・・そんなこと、私も知らなかったよ・・・」 レーナとセフィーが少し泣きそうな表情で見つめてくる。 「何の前置きもなしにこんなこと言われたって、信じられないだろ?それに・・・あまり話したい事ではなかったしな・・・」 それに答えるように、ミルとアルスが続ける。 「・・・そうかもしれないけど・・・やっぱり・・・もっとはやくはなしてほしかった・・・」 「私も、ちゃんと話してほしかったです。オルファ様・・・」 「ああ・・・すまなかった・・・」 しばらくの沈黙・・・ 「・・・ねぇ・・・」 不意に、今まで黙っていたフィンが口を開いた。 「結局オル兄は、普通の人間として生まれたわけじゃなかったんだよね・・・?だから・・・だから・・・・・・」 「・・・ああ、そうだ・・・それが結局Re・ロケット団に入るきっかけになった事件の原因にもなってるんだが・・・」 俺は言葉を切り、フッと笑う 「でも今は、そうやって生まれてきてよかったと思ってる」 「え・・・?なんで・・・?」 「俺は今、父が願ってくれたように幸せだから。それに何より、みんなに出会う事ができたからな」 俺はもう一度笑う。 みんなの間に、笑顔が広がった。 「・・・それじゃ、そろそろ俺の昔話を始めようか・・・」 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― いらないかもしれないけど一応解説 ここから↓でいくつかアレな用語がありますが生物学用語と割り切ってください 無理だという人は見ないで下さい Q.まわりくどい言い方の細胞について A.私と彼女の遺伝子を併せ持った細胞→受精卵  その元となる細胞→卵細胞 Q.妻の万能細胞に私の遺伝子を入れ、培養カプセルに入れる、の意味しているもの A.『妻』の万能細胞を卵巣の擬似空間に入れる  ↓  万能細胞を卵母細胞に変化させる  ↓  数回の細胞分裂  ↓  卵細胞を生成  ↓  卵細胞に『私』の精細胞の遺伝子を入れる  ↓  子宮の擬似空間である培養カプセルに入れる とりあえずこんな感じ 不自然な点があってもご勘弁ください。これ以上は俺には無理です。