…と決意を決めたが…。 まぁ、何だ。 修行しないと暇なのだ…。 セリアから休養司令をされてから360日が経過していた。 セリスが予想した封印解除期間は当たっていたのには、驚いたが。 現在、我は剣を振っている。 剣の技能的な意味で腕が鈍らない程度に修行してるがな。 セリス「セリアさんから休養司令されてるのに、よく修行するよね。」 セリアから教えて貰った技術が、上手く発揮されないと意味ないからな…。 リオ「まぁ…アレだ、腕が鈍らない程度に…な。」 そう我が言うと、セリスは詰まらなそうな顔をして魔剣のある祭壇の方角の空を見ていた。 セリス「そっか…あと8日か…。」 封印解除期間まで後8日…此の異次元世界に危機が訪れようとしている。 渚はというと…我が休養司令を受けてからというものの…3年間近く帰ってこない。 アルトの天力不足と渚の天力補給で賄っているとアルトの執事らしき者から聞いたが…。 あの者は一体何者だったのだろうと何度も思った。 魔剣マギナ…グロウ・ダーク…双方を何とかせねれならない…か。 一方、渚達は…。 〜祭壇〜 魔剣マギナ封印の攻防戦と化していた。 聖剣グレン・ガリバー・ド・エクスカリバーは、沢山のヒビが入り、更に刃が欠けて剣として使えない状態になっている。 渚「く…ッ」 グレン「まだ…いけるぞッ!!」 あまりの魔剣の力に押されながらも、渚は己の魔力を変換し、アルトに天力を補給させる。 アルト「余の封印もこれまでか…ッ」 魔剣から迸る闇の力に押されながら、アルトは歪んだ顔をしている。 マギナ「フハハッハハッ!!此の漲る力ッ!!御前達では止められぬわッ!!」 剣から放射される闇の圧力により吹き飛ばされる2人と一振りの剣。 マギナ「何もせずに、長々と封印されてたとでも思ったのか愚か者共めがッ!!」 全身に傷を負いながらも、アルトは周囲の詮索を開始する。 アルト(誰か…くる………アイツか…リオの魔力を察知して来よったか。) アルト「くそ…こんな時に空気の読まない神天使が来るなんてな…。」 アルトはグレンを片手に持ち、呪文を唱える。 アルト「聖剣グレン・ガリバー・ド・エクスカリバーよ…陽神ある覇者グラン・ヴァード・ザン・キルヴォストの加護により… 今こそ、真の姿を現せ!! 余の名はアルト・ヴィ・ファグナ。 正統なる天の覇者の力を開放し、力を貸したまえ!!」 アルトが剣の解放をする為の呪文を詠唱し終わった時、"奴"は祭壇にある魔剣を既に持っていた。 フォグシエル「へぇ…魔界にはこの様な素晴らしい剣があるのか。」 神天使フォグシエルは魔剣を見ながら、ぼやいている。 それが、神天使の最期の一言になろうとは誰も思わなかったが。 マギナ「我に気安く触るなァッ!!」 フォグシエル「な…グフ…此の魔剣は…まさか…グロウ…」 其処でフォグシエルの言葉は言切れた。 的確に言えば、魔剣に執り付かれたと言った方が早いが…。 マギナ「コイツは良い…そうだ…我は今日から"グロウ"と名乗ることにする。」 グロウと名乗るソイツは、マギナ其の物だった。 グレン「遅かったか…魂と結合される前に倒すぞアルト!!」 アルト「承知…聖剣よ、極光の刃にて奴を滅ぼせ"虹天光刃破"!!」 天から降り注ぐ虹のような色をした光の刃がマギナに降り注ぐ。 グロウ「無駄だ屑がァァァァ!!」 魔剣を大きく振り払い、黒き衝撃波を撃ち放つ。 地を這うような衝撃波は、逃げるアルトと渚を狙うが如く追尾する。 渚「うぐ…こうなったら…召喚術で…。」 渚は倒れながら杖を構える。 グロウ「ほぅ、何を召喚するつもりだ?」 魔剣を構えたグロウが魔力を込めながら、渚に問う。 渚「セリア、みかん…次いでにミカも召喚!!」 …。 セリア「…ふむ、肉体と同化してるか…。」 みかん「うむぅ…倒すのは無理かもしれないね。」 ミカ「何で私は次いでなのよ…。」 怪訝な顔をしながらセリア達が現れた。 グロウ「何だコイツ等は…貴様等とは桁外れな力を持っているじゃないか…楽しめそうだなァ。」 グロウが一人で笑っている事を軽く無視して、セリア達は戦闘態勢に入る。 セリア「取敢えず、戦ってみるか…。」 みかん「やってみなくちゃ分からないもんね。」 ミカ「生態系を遥かに超えた速さで、何とかなるかなぁ。」 とか言いつつも、3人は武器を構えた。 渚「気を付けて…グロウっていう目の前にいる奴はガチで強いから。」 今にも倒れそうな声で渚が言った。 セリア「うーむ…渚が"ガチ"という単語を使うとは…。」 困惑したセリアにみかんが突っ込む。 みかん「グロウが衝撃波撃ってきたよ〜。」 のんびりした声でみかんが忠告。 ミカが武器を構えた。 ミカ「…フンッ。」 光速さえも超える速さで振った剣は、グロウの衝撃波を撃ち払った。 ふむ…。 グロウ「そうでなきゃぁ面白くねぇよなァ。 ヒャハハハハハハッハッハッハァァ!!」 高笑いしているグロウを完全に無視して、セリアが攻撃を仕掛けた。 セリア「…太陽爆誕。」 グロウの足もとから、膨れ上がるように超規模の太陽を発生させた。 グロウ「グァッァ!!」 甲高い声の奇声。 しかし、傷一つ与えていない。 セリア「恐ろしい程堅いわね…みかん〜? 攻撃してみれば?」 セリアはみかんに対して、グロウへの攻撃を勧める。 しかし、みかんは興味無い様な顔をしながら言う。 みかん「セリアちゃん…リミッター全部外した?」 平然とした顔でセリアは言った。 セリア「全部外さないと駄目?」 みかん「外さないと、攻撃しても意味無いじゃん。」 呆れ顔で突っ込まれた。 グロウ「………撃つか。」 グロウ「リ・ジェイド。」 魔剣が大きい口の様な形に変形する。 その口の様な物が、セリア達を襲いかかる。 みかん「混沌神滅剣(ギガ・ブレード)。」 みかんが剣でグロウの術を斬り裂こうとする。 しかし、みかんの魔力剣は敗れてしまい、みかんはぶっ飛ばされる…と思いきや、みかんは消えた。 みかん「うぐぅ☆」 謎の声だけ残して。 セリア「…死んだ振りして学園に逃げたわね…みかん…。」 ミカ「…所謂、戦闘離脱ってヤツか。」 セリアとミカは呆れた顔をしている。 背後にいる、渚達も呆れた顔をしていた。 渚「…リオ君とセリスちゃんも呼ぶね。…召喚!!」 魔方陣からリオとセリスが出てきた。 セリス「…!!」 リオ「封印は解けたのか…。」 辺りを見渡す。 …呼ばれたのか。 祭壇が崩れている。 セリア「あら、久しぶりね。 元気にしてたかしら、理術の担い手"リオ・ヘスティミア"。」 いちいちフルネームで呼ぶな、気持ち悪い。 セリア「…仲間は多いのは良いのだけれども、状況は劣勢ね。」 劣勢か。 奴に勝つ為に我が魔界を去り、修行したのだ。 勝つしか無い!! リオ「邪剣…抜剣!!」 リオの身体から邪剣リアが抜かれる。 リオ「…セリス、行くぞ。」 我は覚悟を決め、グロウに邪剣を向ける。 セリス「三剣の一振り、邪剣に同化!!」 セリスが邪剣と同化する。 三剣の生まれ子たる能力には以下の物があるとセリスから聞いた。 実戦に活かせるかは、我が腕にかかっている。 それに…我が命もかかっている。 能力@ 三剣の能力の解放。 三剣の中の一本と同化することで、其の剣の能力を限界まで引き出せる。 能力A 武器化。 セリス自身が武器と成し、扱えることができる。 この能力の制限時間は1時間という規制がある。 能力B 魔剣マギナの力量測定。 グロウ・ダークと魔剣マギナの力を数値化、又は弱点分析等をして力量を測定できる。 能力C 邪剣の完全リミット解除。 昔に"魂喰らいの剣"と呼ばれていた時の邪剣の力を呼び起こす。 魔剣マギナを遥かに上回る能力補正が所持者にかかる。 其の剣を振るう間は、魂は削られていき、完全に魂が呑まれた場合…何が起こるか分からない。 能力@が発動した場合のみ、自動で発動する。 此の能力を止める方法は、武器同化能力を解除するしか無い。 能力D おそらく最後の能力と思われる…が他にも能力があるかもしれん。 叩虚という力の解放。 セリス自身も効果はよく分からないらしい…。 リア「オイ、ガキ…死ぬ気か?」 邪剣が我に聞いてきた。 勝つ為に戦うのだ。 リオ「死ぬ為で無く、勝つ為だけに御前を振るうぞ。」 …ざっと20秒に倒せなければ、我が魂は全て喰われる。 リオ「いくぞ!!」 リア「あ…あァ、本気でいくぜ!! グロウ「魔術で来るか?…解析不能と判定…愚かな者の魔を滅せよ!!魔壊破!!」 グロウが魔剣を振るう。 魔剣マギナから発せられた闇の波は、我が魔力を消し去ろうと追ってくる。 邪剣を振い、術を薙ぎ払う。 グロウの術を振り消し、真っ直ぐ特攻する。 グロウ「ほォ…直行するとは愚かだな、死ねェ!!」 グロウは途轍もなく大きな…恐らく太陽の1/100くらいの大きさの闇の玉を我に投げ込む。 我は全身が悲鳴をあげようと、グロウに向かい直行する。 グロウの足元に到着。 身構えして、剣を振るう。 グロウを一閃。 グロウ「く…ッ」 しかし… 一線した其の瞬間、我が魂は喰われてしまった。 リオ「グァァァァッァッァアアァァァアアアアアア!!!」 強い黒のかかった赤色の光の柱の様なモノをリオは放っている。 セリア「…始まったわね、通称"邪変"と呼ばれる災いが。」 ミカは不思議そうな顔をしてセリアに訊ねる。 ミカ「邪変?…何ソレ。」 セリア「大昔に、あの剣を振るう大男がいたのよ。 此れは、私が時空を超えて調べた事柄なんだけど…。 其の男は、今は亡くなって…というか肉体すら喰われて消えたって話なんだけど。 今から12億年くらい前に、其の男が"剣に喰われる"って言いながら消えたらしいのね。 当時、その男が住んで居た村長さんに"邪剣は何処から来たのか"って聞いたんだけど… "大昔に作られた遺跡らしき場所の神殿にあった"って言ってたわ。 "邪変"って言うのは、魂喰らい…又は、肉体喰らいによって変異した者の事を言うのよ。 過去に一回だけ"邪変化"した魔族がいたのよ。 其の魔物は1日で全世界の半分を破壊し尽くしたとか…まぁ、そんなトコね。」 ミカが焦りながら ミカ「じゃぁ止めないと…。」 と言うがセリアの一言で黙ってしまった。 セリア「アレを止める?…グロウ・ダーク撃破よりキツイよ?」 ミカ(…どうしたらいいんッスか、セリアさん。) グロウ「何だ、コイツは…。」 グロウが焦っていた。 リオ?「我を呼び起こすのは何者だ…我が目覚めは終焉を意味する…。」 セリス(能力が…解除できない!?) グロウ「死ねェ!!」 魔剣から発せられた莫大の魔力をリオにぶつける。 舞い立つ煙にリオが隠れてしまったが、声だけで生きていることが分かった。 リオ「くだらない術で我が倒せるとでも思ったか?……滅びよ。 空間絶離の理を用いて、奴を消し去れ…。 ドライヴ・リ・ア・ラ・ナイトメ…ァアッァァアアアア!!」 術の失敗。 リオ自身の意思が破壊されているため、術の成功確率が限り無く低い。 集中力が持たないだろう。 此れが何を齎すのかセリアは知っている。 セリア「……消し飛ぶかもね…私達。」 ミカ「何とか出来ないの?」 セリアは笑みを浮かべながらミカに答えた。 セリア「どう考えても、無理♪」 …。 ミカ(セリア…何か考えようよ…。) グロウ「貴様等全員の記憶を消し去ってやる!! 我が覚醒した事を知らずして、世界の救いの道を閉ざす!!」 グロウが何が言っている…がリオの咆哮によってかき消されてしまった。 地獄耳を持つセリアにはしっかり聞こえたが。 セリア「…ヤバいわね…魔力無効領域化してるのよね…何かよく分からないけどさ。」 ミカ「リオっていう男の子の所為なんじゃないの?」 セリア「…あり得るわね。」 グロウ「記憶よ消えろ―――――――――――――――――ッ!!」 リオ?「ァァァァッァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」 リオとグロウの術が混じり、途轍もない衝撃波が発生する。 セリア達は悲鳴と共に、吹っ飛ぶ。 セリスは武器から引き剥がされ、何所かへ吹っ飛んでしまう。 空間が湾曲する…と同時に祭壇、真天界が崩壊していく。 恐らく、空間絶離の理を用いた理術が原因だろう。 皆、吹き飛んでしまった。 グロウさえも…。 …。 …。 我が吹き飛ばされ、目を覚ました場所は…人間界だった。 …。 …。 リオ「此処は…何処だ?」 第十七章に続く